信号機の変わり方

 普段何気なく見ている信号も,注意して見てみると変わり方のパターンが様々であることに気付きます。信号機のシステムが理解できると,先が予想しやすくなって危険度も下げられます。
 今回は信号機の変わり方のパターンについてです。知っているようで知らないことの方が多い「信号」について一緒に学びましょう。

目次

 ペーパードライバーによくある落とし穴の一つが信号機の読み取りです。
 講習中,信号機を学ぶ課題の冒頭で,信号機の変わり方を理解されているか質問しています。

質問

信号が下図のように変化しています。空欄に入るパターンは①〜④のうちどれですか。

 直近の受講者32人にお聞きしたところ,正解である①と答えた方が15名(47%),残念ながら不正解だった方が17名(53%)でした。
 矢印信号は,次に何が表示されるかを知らないと見落としの原因になります。注意する対象を適切に選択することも運転の能力の一つです。改めて押さえておきましょう。

1 信号機の意味

 まずは信号機が示す色や表示法の意味を確認しましょう。

1.1 青色灯火信号

 信号機が青のときは,車は停止線を越えて進むことができます。
 交差点であれば,交差点に進入し通過できます。ただし,前の交通が流れてないときは,交差点に入ってはいけません。

《 青信号にまつわる豆話 》
日本では信号の色の呼び方が独特です。
私たちが青と呼んでいる信号機の色は,実際には緑に見えます。日本は古来から緑を青と呼ぶ風習があるためでしょう。
海外では信号機の色はグリーンと呼ばれています。Enrich Driving でも,国外から来られた方の講習では,混乱を避けるために「グリーン」と呼ぶようにしています。

1.2 黄色灯火信号

 黄色の灯火信号のときは,「車は停止線を越えて進んではいけません」が正解です(※「注意して進みましょう」ではありません!)。信号機が黄色になったときは,止まれるようであれば止まりましょう。

1.3 赤色灯火信号

 赤色の灯火信号のときは,停止線を超えて進んではいけません。
 ただし,交差点の中にすでに入っている右左折中の自動車は,他の交通に注意して交差点から出るようにします。詳しくは後ほど 3 信号機の読み取りと通行方法 で紹介します。

1.4 黄色点滅信号

 黄色の点滅信号のときは,歩行者や車は,他の交通に注意して進むことができます。
 押しボタン式信号に用いられることが多く,押しボタンを押すと,車両側の信号は,黄(点滅) → 青(点灯) → 黄(点灯) → 赤(点灯) へ変わっていきます。

1.5 赤色点滅信号

 赤色の点滅信号のときは,停止線で一時停止して他の交通に注意して進みます。
 都心でも踏切をまたぐ交差点などは点滅信号になっていることがあります。この信号がある周囲では,忘れず従いましょう。
 注意点として,歩行者は「止まれ」ではなく,「注意して進むこと」ができます。車は残存歩行者に注意しましょう。

2 信号機の変わり方と仕組み

 信号は通常,赤 → 青 → 黄 → 赤 → …… と変わっていきます。
 一つの信号単体だけを見ても,青色から黄色に変わるタイミングはなかなか掴めません。青信号の交差点に進入しようとしたときに信号が黄色に変わってしまった場合,手前で止まるべきか/このまま通過できるかの判断は非常に悩ましい(ジレンマ)ものです。
 かつて私は大型バスも運転していましたが,大型バスの特性上,止まる判断が遅れると急ブレーキになってしまいます。人を乗せるので,よりシビアな判断が求められ,苦労したのを覚えています。
 裏を返せば,信号の変わるタイミングがわかると,ぐっと安全に運転できるようになるのです。ここからは信号機の変わり方について見てみましょう。

2.1 ベースの信号の変わり方と通行

 信号機の変わるタイミングを測るためには,同じ方向の歩行者用信号が参考になります。
 上のアニメーションは,歩行者用信号が変わってから車両用信号が変わるまでの流れを,実際のタイミングに近くなるよう作りました。
 青信号の交差点を通過する際には,歩行者用信号で点滅が始まったり赤になったりしていないか確認し,止まるか/通過するかの判断材料にしましょう。

 歩行者用信号がなかったり見えづらかったりする場合は,交差点に入る前に速度を 10km/h ほど落として交差点に近づくと,黄色に変わったタイミングでもうまく対応できます。この方法によって,前述したバスの運転でも,ブレーキがきつくなったり信号無視のようになったりしてしまう悩みから解放されました。

2.2 ベースの右矢印信号の変わり方

 矢印のある信号は様々なパターンがあり,慣れている人でも迷ったり見落としたりすることがあります。特に信号の変わり方の知識が少ないと,予測がつかないため,矢印信号を見落とすことに繋がります。
 まずはベースとなる変わり方を押さえて,変わった信号パターンはその交差点ごとに覚えるのがいいでしょう。

 下の図のように,右向きの矢印が出る信号は,街中でよく見かけます。
 歩行者用信号と車両用信号の変わり方にセットで慣れておき,次を予想できるようにするのが円滑な交通のコツです。

ベースとなる右矢印信号パターン
  1. 歩行者用信号が青点滅 → 赤に変わる
  2. 車両用信号が,青 → 黄 → 赤 に変わる
  3. 右矢印信号が点灯する
  4. 再び 黄 → 赤 に変わる

2.3 様々な向きの矢印信号

 通常,「赤信号の下は右向き」「黄信号の下は直進」「青信号の下は左向き」の矢印が出ます。どこを見るかわかっていると,見落としを減らせます。

 3方向それぞれの矢印が出るパターン(一部歩車分離式セパレート信号)のアニメーションを用意しました。

3方向の矢印が出る信号パターンの例
  1. 歩行者信号は両側とも青,車両用は直進のみ
  2. 歩行者信号は左側が 点滅 → 赤 に。車両用は直進に加えて左向きも点灯
  3. 歩行者信号は右側も 点滅 → 赤 に。車両用は矢印がすべて消えて,黄 → 赤 に
  4. 車両用の右向きが点灯
  5. 車両用の矢印が再度消えて,黄 → 赤 に

※ 青色にならないので注意が必要

 信号パターンだけを見ると一見複雑に見えますが,人と車の流れをイメージすると,それぞれが安全に通行できるようになっているのがわかります。このような信号パターンに慣れておくと,他の交差点でも応用できるようになるかと思います。

 実際に運転するときにも,特に右折する場所では,なるべく交差点に入る前に信号パターンを判別して交差点に入るようにしましょう。

2.4 押しボタン式信号

 歩行者として押しボタン式の信号機を使っているときに,車両用信号の変わり方をご覧になったことはあるでしょうか。
 アニメーションは黄色点滅信号の場合を用意しましたが,青信号が灯火している押しボタン式信号でもタイミングや流れはほとんど同じです。

黄色点滅の押しボタン式信号パターンの例
  1. 車両用信号機は黄色が点滅している(青色のときは灯火している)状態で待機
  2. 歩行者がボタンを押す
  3. 一度青が点灯した後,黄 → 赤 に変わる
  4. (歩行者側の信号が青に変わって横断できるようになる)

 運転中に「押しボタン式」と書かれた信号を見つけた場合,歩行者などが信号機に近づいたら黄色になる予測を立てて備えましょう。

3 信号機の読み取りと通行方法

3.1 青信号のときの通行方法

 信号機の変わり方と併せて,交差点の通行方法についても見ておきましょう。
 青信号の意味は「車は停止線を越えて進むことができる」でした。進む方向によって,どこまで進めるかは異なります。

直進する場合

交差点に進入し通過できます。ただし,前の交通が流れてないときは,交差点に入ってはいけません。

左折する場合

曲がった先の横断歩道までは進むことができます。その後は,歩行者の横断を妨げないように通過しましょう。

右折する場合(二段階右折を除く)

交差点の中心付近までは進むことができます。そこまで進んだ後,その先に進むかどうかを判断しましょう。

右折車として後続する場合は,交差点に進入する前に,まず信号の種類を見ます。
右矢印付きの信号なら,何台かは右折できるので,交差点の中に入って列を作って待つことができます。
矢印信号がない信号なら,交差点の中には1〜2台しか入れません。1台出ていったら1台入るといったように,ところてん方式で入っていきましょう。

 右左折する場合は,曲がった先の信号は必ず赤になっています。最初に見た信号で判断して交差点から出るようにしましょう。

3.2 交差点内で赤信号に変わったとき

 青信号で交差点に進入した後,右左折するのを待っている間に赤信号に変わってしまった場合はどうすればいいでしょうか。

 交差点内で残っていると,次に青になった側の通行の邪魔になってしまうため,そのまま行動を続けて交差点から出ます。この場合は信号無視にはなりません。(道路交通法施行令第2条赤色の信号3・4)
 交差点から出るときには対向車や歩行者の走行の邪魔にならないように気をつけなければなりませんが,絶対にあせらないようにゆっくりと進みましょう。

3.3 信号の変わるタイミングを予想しよう

 信号は通常であれば対向車側の信号も同じ灯火がついており,歩行者用信号が点滅から赤に変わった後に車両用信号が黄色に変わります。
 ここまででベースとなる信号の変わり方は,だいぶ予想がつくようになったのではないでしょうか。

 信号の読み取りは右折のタイミングをとるときに重要です。ここでは通常と異なる,変則的な変わり方をする信号の例をいくつか挙げます。特にこれらの右折のタイミングを掴んでおくと,複雑な形状の交差点を通行するのに役立てると思います。
 今回はこれらのパターンになるのはどのような交差点なのか,クイズのように考えてみてください。周りの人に聞いてみるのもいいと思います。
 答えは,次回以降で徐々に紹介していきます。

直進と右向き矢印が順に出るパターン
直進矢印と歩行者用信号が連動するパターン
4方向への矢印が出るパターン

4 まとめ

 普段何気なく見ていた信号機にも,様々なパターンがあることを見てきました。まずはベースを覚えてから,特殊なパターンに派生していくのが良いかと思います。
 今回のアニメーションでよくわからなかったという方も,実際に交差点で,信号の変わり方や車の動き,対向車の動きなどを見て,予想して納得することから始めてはいかがでしょうか?
 余談ですが,私の育った町は田舎だったため,近くに信号機は押しボタン式信号の1個しかありませんでした。

 出張型ペーパードライバー講習 Enrich Driving では,安全運転に関する情報や交通のお役立ち情報をお伝えしています。千葉をはじめとする,東京都・茨城県・神奈川県など無料出張エリアも広くございますので,ぜひご利用くださいませ。

 今後ともよろしくお願いいたします。

注意

このコラムは,運転を再開された方へ向けた基礎知識として書いています。伝えやすくするために,道路交通法で使用されている用語と異なる表記をしている場合があります。
また,道路交通はそれぞれの場所によって大きく異なります。実際の道路状況に合わせて法律を守り,正しく安全に通行しましょう。

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