日本交通心理士会の地区別研究会に参加しました
去る7月1日,仙台で開催された「日本交通心理士会 2023年度 地区別研究会(北海道・東北・関東地区)」に参加しました。(これまではずっと私費参加だったのですが,今年は会社から参加費が出てありがたかったです)
交通心理学研究の発表は,交通心理士になるための登竜門です。私は,2019年の北海道・東北・関東地区別研究会と,同年の交通心理士会第16回川崎大会にて研究発表をし,交通心理士になることができました。
今では最新の交通教育を学ぶ場として参加しています。ここで学んだ効果的な教育方法を,自分なりにアレンジして直接現場に活かせればと思っています。
今回は9件の発表を聴講してきました。
新型コロナウイルスの規制も緩和され,約50名を超える方が参加しておりました。知り合いの先生方も元気そうで何よりでした。
- 新人タクシードライバーへの事故防止研修の実践報告とその効果検証(松村 2023)
- 高校生のための自転車安全教育プログラムの開発 ――“ミラーリング方法” を用いた教育とその効果測定――(三浦 2023)
- “インシデントプロセス法” による安全運転教育の実践 ――自転車安全教育での効果測定とドライバー教育への可能性――(千田 2023)
- 配偶者間運転行動評価に基づいた「高齢者のための『夫婦同席』安全運転プログラムの開発構想」(奥山 2023)
- 企業研修スキッドトレーニング教育プログラム改善のための意識調査(加藤 2023)
- デイサービスにおける安全運転管理に関する実態と課題の探索 ~事業所管理者へのインタビュー調査を通して~(戸波 2023)
- 交差点右折の安全意識調査(井澤 2023)
- 天候の違いが駐車場での事故に及ぼす影響(1) ――駐車行動の観察(情野 2023)
- 天候の違いが駐車場での事故に及ぼす影響(2) ――コンフリクトの分析(山口 2023)
特に私が興味をもった発表は,「デイサービスにおける安全管理に関する実態と課題の探索 ~事務所管理者へのインタビューを通して~(戸波2023)」でした。
調査研究を通して,デイサービス事業において,以下の実態がわかりました。
- 管理者が,運転指導の仕方がわからない
- 運転指導は専門家などに依頼はしておらず,独自に行なっている
- 管理者から従業員に対しての運転指導は,道案内のみに留まっており,運転に関わる指導はあまり行われていない
- 狭い住宅街の利用者が多く,送迎車もハイエースなどの大きな車で,管理者は従業員の運転に関して不安を抱えている
本来,事業所の安全運転管理者は,従業員の交通安全に関しての指導などをしなければなりません。
私どもの周辺にはたくさんのデイサービス事業者があり,様々な方が事業所の看板を掲げて運転をしているのを見かけます。利用者をご自宅から施設に送迎することも1つの業務と考えると,適切な運転指導を受ける必要があると感じます。
「送迎も立派な仕事。運転を軽く考えないこと」
緑ナンバーをつけている事業者は,運転を専門に行っているので,様々な教育の方法や資料を持っていたりしています。しかし,白ナンバーで送迎や営業を行っている会社は,運転がメインの仕事ではないので,運転に対しての安全管理意識,知識やノウハウといったものが乏しいのが現状です。
現在,福祉事業者の数は増加傾向にあります。同時に若者の車離れも深刻で,ペーパードライバーなど運転に不慣れな人が,余儀なく交通参加されるものになると思います。
運転者の管理を行う方法は様々ですが,運転のベテランに聞くよりも,運転教育の専門家に聞く方が間違いありません。適切な教育や正しい運転の評価などが受けられます。
運転は技術の向上も必要ですが,自分との対峙をしっかり行うことが事故防止の1番のカギとなります。交通のコーチングを活用することで,自己対峙が身につき,正しい運転ができるようになります。
私どもは会社として,お近くの事業者へ積極的にアプローチするべきだと,改めて認識した研究発表でした。
今回は地区別研究会でしたが,日本交通心理学会の一番のイベントである年次大会が,8月に開催されます。今年の日本交通心理学会第88回名古屋大会は,2023年8月4・5・6日の3日間,名古屋大学東山キャンパスで行われます。
大会では,大学の教授をはじめとする様々な研究者の発表を聴くことができます。研究の裏側など気になることがあれば直接発表者に訊ねることができる,貴重な機会でもあります。
現在の Enrich Driving の講習方法はここで学んだものが多くあり,より効果的な最新の教育方法を実現できました。今年の大会でも更なる学びが得られることと楽しみです。
運転者教育は100人いたら100通りあり,個人に合った運転者教育を行うことが重要です。私が Enrich Driving で掲げているテーマは「納得する運転者教育」です。
学びを活かしてサービスを充実できるよう,今後も研鑽してまいります。